「週刊みつのり」

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『この世で一番大きい”影”』

「この地球上で一番大きい“影”はなんでしょう?」

よくあるなぞなぞだと思っていたら、どうやらそうではないらしい。

 

悔しいがわからない。大きい建物か。

いや地球上と描かれているから、自然がらみで考えよう。するとエベレストの影、グランドキャニオンの向こう側、はたまた深海だろうか。

ふっと答えがひらめいたのは、それから1週間してからだった。

 

「果報は寝て待て」とはよく言ったもので、時間が経つとモノの見方が自然と変わることがある。

失くした財布が意外なところから出てきたり、気づけば日が落ちるのが遅くなっていたり、それまで気づいていなかった壁のキズを見つけてしまったりする。

果報に限らず、時間を置くことには一定効果があるのだろう。

 

ただ、果報は寝るだけではなく、悩み抜いても来る。

2年半。僕の悩み続けたあることが、解決するまでに要した時間だ。

 

「自分が何をしたいのかわからない」新卒入社してから毎日のように悩んだ。

心理学では、人のストレスは「自分がどっちに向かっているのかわからないとき」に最大化するという。

なるほど確かに、と思いながら、頭の右上あたりにごわごわと残る黒い影と戦った。

影は仕事でも休みでも、飲み屋で騒いでいてもお構いなしに、僕を見えないところへ引っ張ろうとする。

 

抵抗した。

ノートに思いのたけを書き起こす。

やりたいことは絶対にやる。

スマホのメモに不満を全部ぶちまける。

そうやって自分を確認しないと、やられてしまう気がした。

 

ある日の夜の帰り道、ギリギリの戦いに勝利した。

堅固としてブレない答えが一瞬で築かれる感覚。

2年半の長い長い構想を経て一夜にして書きあがった僕の図面は、まるで不落の城砦のように、今でも僕を守ってくれている。

 

寝てもいいが、苦闘してもいい。

真珠が時間をかけて光り輝くように、やっと導き出した答えは価値があるはずだ。

 

ちなみに、冒頭のクイズの答えは、「夜」

明けない夜はないように、いつか影に勝てる時がくる。