「週刊みつのり」

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【エッセイ】皮肉もそこまで悪くない

空回りしてかえって目的と違う結果を招いてしまうことを「皮肉」と言う。

どこにでもいるマジメな中学生だった僕は、
とにかくモテたくて背伸びばかりしていた。

授業が退屈なときはこっそり意中の女子の顔色をうかがっていたし、
夏の球技大会では女子の応援を集めたくて、やたら目立つプレーを意識していた。

定番の「授業で寝たふり」も何回かトライした。
忘れられないのは中1の冬。
女子へのアピールに一生懸命な僕に、
「寝たふりはやめなさい」なんてデリカシーのかけらもない注意を飛ばした教師がいた。
ただの寝たふりじゃねえよ、今すっごい大事な時なんだよ!!


それから3年を過ごしたある日の夕方、
ほとんど話したことのない女の子から、突然メールで告白された。

卒業の迫る2月、喜びよりも驚きが勝った当時の僕は、マフラーに顔をうずめるのが精一杯。
メールには二つ折りの画面いっぱいにクマやお花の絵文字が入っていて、一番下にはこう書かれていた。

「どんなときも人にやさしくて、気さくに話しかけてくれるあなたが好きです」


自分の淡い空回りも、知らない誰かの冬のワンシーンになっている。

当時は余裕がなかった。

けれど、時間が経った今になって思い返すと、
「皮肉」も案外、悪くないのかもしれない。