「週刊みつのり」

本の編集者の生活を身の回りの方に伝えるメルマガ

2021-01-01から1年間の記事一覧

「名前のなかった気持ち」

「それって好きなんじゃないのー?」小学校からの帰り道、クラスメイトのからかい口調を、僕は今でもよく覚えている。 当時9歳だった僕は、友達からの何気ない一言にとても驚いた。別に何が衝撃だったわけではない。ただあっけにとられていたのは、友達の冗…

『この世で一番大きい”影”』

「この地球上で一番大きい“影”はなんでしょう?」 よくあるなぞなぞだと思っていたら、どうやらそうではないらしい。 悔しいがわからない。大きい建物か。 いや地球上と描かれているから、自然がらみで考えよう。するとエベレストの影、グランドキャニオンの…

『料理の名人』

『山月記』で名高い中島敦の作品のうちの一つに『名人伝』がある。 主人公の男、紀昌(きしょう)が弓の道を究めんとして厳しい鍛錬を積み、当代随一の弓の名手になる話だ。 この話の要諦は、国で一番の実力を得た彼が、弓を打たずに鳥を射る奥義「不射の射」…

【エッセイ】皮肉もそこまで悪くない

空回りしてかえって目的と違う結果を招いてしまうことを「皮肉」と言う。どこにでもいるマジメな中学生だった僕は、とにかくモテたくて背伸びばかりしていた。授業が退屈なときはこっそり意中の女子の顔色をうかがっていたし、夏の球技大会では女子の応援を…

【ソーシャルアパートメントの暮らし紹介】ひとりになるまで徒歩10秒。“ひとりじゃない”まで徒歩10秒

ひとり暮らしには「おはよう」がない。 ある朝、実家で目を覚ました僕はその日常を想像して、心臓がえぐられるような痛みを感じた。 思えば、秘かに悩みはじめたのはそこからだった。 どうすれば実家から引っ越しつつ、「おはよう」のない孤独を避けることが…